4月22日は、地上にいる誰もが地球のことを思うアースデイとして知られ、ドクターブロナーもこれまでイベントやキャンペーンなどを通して、地球のことを考えるきっかけ作りをしてきました。そして今年は、本国でスペシャルオペレーション ヴァイスプレジデントを務めるゲロ・レソン氏の来日が決定。そこで私たちと縁のあるインフルエンサーの方々をご招待し、改めてドクターブロナーの起源から現在、取り組んでいる活動、さらにフェアトレードとリジェネラティブ・オーガニックに関するトークショーを開催。後半ではこれから発売される新商品の紹介など、盛り沢山な内容となりました。
CONTENTS
1―アメリカでは23年連続で全米売上No. 1の支持率!世界中で支持されるナチュラルソープ「ドクターブロナー」の起源
2―ドクターブロナーが掲げるオールワンビジョンは6つの「コズミックプリンシプル」が司る
3―ドクターブロナーが今、力を入れる「オーガニックを超えた」農業 リジェネラティブ・オーガニックについて
4―街や住宅の改修、月経衛生の取り組み、就業機会の拡大など その他のフェアトレードの具体例について
5―土壌だけではなく、街や人々もリジェネレートする取り組み 新たに着目したアグロフォレストリー
6―RO認証を取得したココナッツを使って作られたROバージンココナッツオイルの新発売
まずはドクターブロナーについて、その始まりを紐解きたいと思います。
ドクターブロナーの創始者は、ドイツのユダヤ人街で1858年から続く石けん職人一家、ハイル・ブロナー家の3代目として生まれたエマニュエル・ブロナー氏です。ハイルブロナー家は世界初のカスチールリキッドソープ を作ったソープメーカーでもあります。
彼は20代で渡米し、渡米後は、石けんメーカーで科学者として働いていましたが、第二次世界大戦が勃発。ドイツに残してきた家族をアウシュビッツで無くすという痛ましい体験に見舞われます。そこから彼は、もう2度と自分と同じような辛い体験をする人がいなくなるよう、世界平和と宗教や民族の差別のない結束を1つの世界を唱える「オールワンビジョン」という哲学を生み出します。そして「オールワンビジョン」を企業理念とし、1948年にカリフォルニアで誕生したのが現在のドクターブロナーです。
エマニュエル・ブロナーは当時、ソープづくりをする傍ら、自分の哲学であり企業理念である「オールワンビジョン」を広めるため、各地で定期的に講演会を開催。その講演会の後には、来てくれた人々へ手づくりの石けんをプレゼントしていました。その後も講演会は好評を博し、自分の信念が多くの人々に届いているのを感じたのも束の間、実は講演後に配られる石けんを目当てに集まる人々が増えていることを知ります。
願っていた反響とは少し違えど、各地で石けんが喜ばれていたことを知ったエマニュエル・ブロナーは、それを逆手に取り、誰もが毎日手に取る石けんのラベルに自分が思い描く「オールワンビジョン」の内容をビッシリと記載。それがマジックソープのアイコニックなラベルの誕生秘話となります。
そして現在では、世界40か国で販売され、インターナショナルに愛されるナチュラルソープブランドとして認知を獲得。アメリカだけでも23年連続でNo. 1*の支持率を誇り、倫理的なビジネスアプローチから、消費者はもちろん競合企業などからも熱い信頼と尊敬を集めています。
*SPINS社調べ(2000~2022年、米国ナチュラルソープ市場)
オールワンビジョン、それは「まるっと変えよう。」ということ
ではエマニュエル・ブロナーはどのようなビジョンを思い描いていたのか。それは主に「差別のない結束」と「人間も動物も植物も同じ地球という名の船に乗る一つの家族、一つの世界“オールワン”」であり、そのための企業理念が次の6つでした。
1.よく働き、成長すること
2.お客様のために正しくあること
3.従業員を家族の一員のように大切にすること
4.原材料生産者に対して公正であること
5.地球を自分の家のように大切にすること
6.正しいことのために投資し、戦うこと
ドクターブロナーは、自分たちを「闘うソープメーカー」と呼び、この6つの企業指針をコズミックプリンシプル(宇宙原理)として重んじています。この6つの原理をバランスよく行うことで、その中心に位置するさまざまな製品を通して世界をまるっと変え、ひとつになることを目指しています。
そのため、ドクターブロナーは現在、グローバルで売り上げの1%を社会正義、環境保護、動物愛護のカテゴリーで3つの寄付をしており、2021年の実績では約11.5億円(米国&その他の国)を寄付しています。また2003年からマジックソープの容器に100%リサイクルプラスチックボトルを使用。温室効果ガスの削減を目指し、原材料だけでなくパッケージもサスティナビリティに取り組んでいます。また私たちのさまざまな取り組みを評価してもらうため、2015年には、サステナブル認証として知られるB Corp*2を取得。実は、取得当初から毎年、環境コミュニティ総合のカテゴリーの上位5%に与えられるというベスト・フォー・ザ・ワールドにも選ばれています。活動内容や細かな数字については、年次レポートである「オールワンレポート」をHPからより詳しく知ることができます。
*2:アメリカの非営利団体B Labが運営する国際的な認証制度。企業の運営やビジネスモデルが、従業員、地域社会、環境、顧客にどのような影響を与えているかを厳格に評価し、社会的・環境的パフォーマンス、透明性、法的説明責任の最高基準を満たしている企業に対して認証マークが与えられる
上記で紹介したものも含め、数々の取り組みには資金が必要になります。ここで浮かび上がる“なぜ、どこから資金を調達しているのか?”という疑問に対して、ゲロ氏はこう語ります。
「ドクターブロナーは外部からの出資がない家族経営で有名ですが、それには理由があります。まず創始者の孫であり、オーナーを務めるデイビッド・ブロナー氏とマイク・ブロナー氏を含め、幹部などの経営陣に配当金を支払っていません。さらに彼らの給与の上限を決めることで、環境改善のための事業などにまとまった資金を費やすことが可能になります。加えて毎年、収益のおよそ5%から7%程度を必ず慈善活動など、様々な環境への活動資金として充てること。会社のオーナーや経営陣にお金が集中しないようにしつつ、さらに収益から必ず決まった金額を慈善活動の資金にすること。その2つのシステムによって環境改善のための活動資金を確保しています。アメリカでは珍しいとされる「家族経営」にこだわり、エマニュエルの意思や伝統を引き継ぎ、進化させていく、そして「ソープで世界を変える」ことを実現したいという想いがあるからこそできることです。」
左がデイビッド・ブロナー、右がマイク・ブロナー
あくまで自分たちの理念を貫き、事業展開し続けてきたドクターブロナーですが、オーナーのデビッド氏とマイク氏は20年ほど前、とある疑問を抱きます。それは“自分たちが作るソープに使っている原材料の生産取引が、生産者やその周囲のコミュニティにとってメリットになっているのか”というもの。ゲロ氏は続けます。
「地球環境のことを見つめ直し、そこからすぐにオーガニックで調達できる原材料に切り替えました。しかし原材料をオーガニックで作られたものに切り替えたものの、仲介業者が入ることで、生産者の実際の社会的な状況や環境などを自分たちが知ることができないことにも気付きました。
そこで2005年以降、オーガニック・フェアトレードの原材料へと移行をはじめ、リジェネラティブ・オーガニックなどを通して、サプライチェーンそのものの構築と運用を実現するために始動。各地に工場を建設し、従業員を採用するほか、全世界で複数の垂直統合型プロジェクトに投資をスタートさせました」
グローバルなメンバーで構成されるスペシャルオペレーションチーム。
左から3番目がことチームを牽引するゲロ・レソン氏。
フェアトレードというと公正な価格での取引など、日本でも浸透しておりイメージしやすい言葉である一方で、リジェネラティブとはどんなものか。 ジェネラティブは「環境再生型」と訳され、文字通り農業をすることで土壌が健康になり、その周辺の環境一体も再生し豊かになることです。本国で実際にリジェネラティブ・オーガニックのプロジェクトを進めているゲロ氏が具体的な方法を語ってくれました。
「リジェネラティブ・オーガニックについて欠かせないのがコンポスト(堆肥)とマルチング(植物の根元の土を通常はビニールなどの資材で覆い、水分の蒸発や害虫の発生を防ぐこと)です。まずコンポストについて。1つ目はバーミコンポストと言って、ミミズを使ってのコンポストを生成しています。そして2つ目は、地熱を利用したコンポスト。大型機械を使いワラや葉っぱ、その他の有機物を混ぜ込むことでコンポストを大量に生成しています。農業の際に化学肥料ではなくこれらのコンポストを各地で使うことで、自然と土地の質を改善するリジェネラティブ・オーガニック農業を推進しています」
左はバームコンポスト、右は地熱を利用したコンポスト。
これらのコンポストを使うことで、土壌の有機物、保水力、肥沃度の指数を測定し改善されているのも確認されている。
「次に通常はビニールで行うマルチングを被覆植物という土を覆うように成長する植物で行っています。マルチングは主に商用の作物が収穫された後、次の栽培までの農閑期を利用します。1ヶ月程度で成長する豆科の植物を被覆植物として少量だけ生産することで、空気中の窒素を土壌に取り込みつつ、次の作物を植える前にそのまま土壌に一緒に耕してそれらを織り混ぜる。それによって豆科の植物そのものがバイオマスとしても活用できます」
農閑期にもその場所で豆科の植物などを育て、土壌を健康に維持する被覆植物によるマルチング。
「私たちは早くからコンポストと植物によるマルチングを農家の方々へ活用するように働きかけてきました。またこれらの設備や機械の導入などに掛かるコストは、農家の方々と我々で半合しつつ、必要ならば教育や訓練も実施。そうして土壌が改質されることで土の水分も保持でき、干ばつや洪水による被害も軽減でき、生産性も向上します。こんな良いことだらけのリジェネラティブ・オーガニックをますます推進したいと考え、パタゴニアなど、その他の企業、研究所と一緒にアメリカでリジェネラティブオーガニックサティフィケートという認証も作りました。
そして2011年からスリランカのセレンディポールでは、堆肥、マルチング、間作、トレーニングなどを行い“オーガニックを超えた”農業をスタート。そこで作られたココナッツが2020年にRO認証の設立と同年に認証を取得しました。」
さらにセレンディポールでは、新たに始動したリジェネラティブな動きがあるとゲロ氏は言います。それは混合型と言われる“アグロフォレストリー”です。
「これまでのやり方だと、ココナッツ農家ならココナッツの木の単独で栽培しては収穫、販売するというのがやり方だったのですが、そこにカカオやキャッサバ、ひまわりなど、それぞれに性質の違う植物を区画整理しながら配置、栽培していく手法です。この手法のいいところは本来、ココナッツやカカオは、実をつけて販売できるようになるまで少なくとも4、5年(作物によってはそれ以上の年数が)かかります。しかしキャッサバは1年で実を収穫、販売することができるので比較的短期間で農家の人々の収益を確保することが可能に。さまざまな作物を栽培することで収入は安定し、生産効率も向上するうえ、常に植物を育てているので大気中の二酸化炭素の放出も軽減できます。このアグロフォレストリーについては、出だしこそ費用などがかかりますが、一度栽培が始まると保全方法などは非常に簡単なので、多くの企業がこれをお手本にして欲しいと思います」
スリランカのセレンディポールに続き、そのほかの地域でも進むアグロフォレストリープロジェクト。
リジェネラティブ・オーガニックから、新たに出てきたアグロフォレストリーなど、相変わらず世の流れの2,3歩先を行くアクションを続けているドクターブロナーですが、実は今年、待望の新製品が日本で発売予定!
前述した、2020年に初めてRO(リジェネラティブ・オーガニック)認証を取得したココナッツを使って作られたROバージンココナッツオイルが発売されます。
15年以上、農薬や化学肥料を一切使用せずに育てられたオーガニックココナッツをホールカーネル(中身とそれを包んでいる薄皮も残した状態)から低温エクスペラー製法で抽出したバージンココナッツオイルです。イベント当日には、このココナッツオイルで作られたクッキーの試食もあり、その風味の濃厚さとほっこりとした甘さ、美味しさに驚きの声も!
ドクターブロナーの歴史から、オールワンビジョンのシェア。さらにビジネスを超えた取組みや活動について語られた今回。耳慣れないリジェネラティブ・オーガニックやアグロフォレストリーに関しても、プロジェクトリーダーであるゲロ氏直々に説明してもらえたことでさらに学びを深めることができました。
とても有意義な時間であると同時に、すでにサスティナブルのその先を見つめ、積極的に環境をよくするリジェネラティブな動きに移行しているドクターブロナー。
フェアトレードに関する取り組みについても、よりじっくりと後編で掘り下げます。