ゴミやタバコをポイ捨てしない社会を実現すべく、20年以上にわたって「街のそうじ」を続けている東京・原宿発祥のNPO法人「green bird(グリーンバード)」。
「きれいな街は、人の心もきれいにする」というコンセプトを掲げ、日々どのような活動を行なっているのか。地球環境に対する想いとあわせて、理事長の福田圭祐さんにお話を伺った。
原宿〜表参道を拠点にgreen birdが活動をスタートしたのは22年前。今では北海道から沖縄までの日本各地にくわえ、アジアやオセアニア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカといった、海外にまで、その活動の輪は広がっている。参加者は実に、年間でのべ約3万人。福田さんは3代目理事長として、それら全ての運営を取りまとめている。
「国内外、合わせて約70のチームがあって、それぞれの地域周辺のごみ拾いを定期的に行っています。各チームにはそれぞれリーダーがいますが、運営の仕方はそれぞれの裁量次第。例えば活動日もチームごとに違うし、参加者の属性もバラバラです。老若男女、世代、職業、社会的立場などに関係なく、誰でも気軽に参加できるようにするのがモットー。全く強制ではないですし、1度きりの参加でもかまわない、というスタンスでやっています」。
ここでひとつ、「街のごみを拾う」という行いに対して、どのようなイメージを持っているか、思いを巡らせてみてほしい。
「他人が捨てたゴミを率先して拾うなんて素晴らしい」と感心する一方で、「はっきり言って自分からやろうとは思えない」という人がほとんどだろう。いずれにせよ、それなりの覚悟と行動力がなければ、なかなかできることではない。
福田さんはなぜ、この活動に参加するようになったのか。その理由がちょっとユニークだ。
「高校三年生の時に大学入試で推薦をもらうための書類に、『ボランティア経験 ある・なし』を書く欄があって、これは何かやらねばなと。そのときに色々と調べた結果、『green bird』の存在を知りました。そういう意味では、不純な動機なんですよね」。
実際に参加してみると、いい意味で思っていたものとは違っていたという。
「10人くらいの参加者がいたんですけど、みんな職業も年齢もバラバラだったんですよ。美容師の人もいれば、占い師の人もいたし、『生徒の更生の一環で』っていう先生もいました。で、誰一人として『環境』のことを言わなかったんです。それが良かったんでしょうね。『普通に過ごしていたら出会えないような人と出会えて話をした』ことが、『街のごみを拾った』こと以上に面白かったわけです。その時に思ったんですよ。ボランティアに参加する動機なんて、なんでもいいんだなと」。
ごみを拾うことに特別な理由なんかなくてもいい。どんな形でも、ごみを拾うというアクションさえ起これば、たとえ小さくとも「街が少しだけきれいになった」という事実は揺るがない。
「僕らの活動は『社会貢献の入門編』なんです。社会貢献って、いかに一歩目を踏み出せるかが一番大事。朝の散歩がてらでもよし、仕事の気晴らしでもよし。ごみ拾いは日常のアクティビティのひとつ、みたいな感覚で参加してもらえたらいいなと。ハードルが高いままだと、何もはじまらないですから」。
取材当日、実際にごみを拾う様子を見せていただいた。
背番号入りの緑色のビブスを着て、再生繊維でできた手袋をはめ、カラフルにペイントされたトングを手に持ち、生垣や路肩に捨てられたゴミを一つひとつ拾っていく。
タバコの吸い殻、マスク、ペットボトル、空き缶……などなど。拾ったごみを入れるのはgreen birdのロゴが入ったバイオマスプラスチック製のビニール袋だ。
「最初は紙袋でやろうとしたけどコストがかかるし、環境のことを突き詰めれば麻の袋がいいんじゃないかと思ったりもしました。でも完璧を求める前に、少しずつできることからやろう、ということで、現状は食用に適さない古米など 飼料としても処理されず廃棄されてしまうお米をアップサイクルしたビニール袋を使っています」。
ここでひとつのことに気づかされる。私たち身の回りにあるもののほとんどが、いずれはごみになるということだ。
「ごみを拾っていて思うのは、捨てられるごみよりも、ごみになるものを減らさないことには、根本的な解決にはならない、ということ。ごみを出さないように普段の生活の中で何ができるか。問題の本質はそこにあると思っています」。
マイボトルを使うだけじゃなく、街中にある給水スポットを活用してみること。雨が降ってきたらビニール傘を買うのではなく、傘のレンタルサービスを利用すること。お菓子は量り売りで買うのを心がけること。シャンプーや洗剤は詰め替えもしくはリサイクルできるものを購入すること。コンポストを使うこと。マイバッグを使うこと……。
毎日使うものを見直し、意識を少し変えるだけで、私たちがすぐに実践できる“小さなアクション”がたくさんあることに気づかされる。ごみを拾うことだけが、答えではないのだ。
拾ったごみから新しい何かを作る。そんな意識で、福田さんたちが実践している取り組みのひとつが「RePLAMOプロジェクト」だ。
これは全国各地でビーチクリーンを行い、そこで拾ったゴミが一カ月後にウミガメのプラモデルになって、参加した子供たちの元に帰ってくるというアップサイクルな試み。
一つずつ手洗いして汚れや匂いをとったプラスチックごみを原料に、専門業者に設計してもらった型を使って甲羅や足といったパーツが作られている。
「海のごみって、圧倒的にプラスチックごみが多いんです。『街のごみが海のごみの8割を占める』って言われますけど本当にその通りで、自分たちが消費したゴミが海に流れ着き、それが劣化したものがずっと残ってしまっている。ただ、問題はプラスチックの存在そのものではなく、正しく捨てられていない結果、正しくリサイクルされていないことなんです。
ようはプラスチックを減らしていくことよりも、今あるものを資源として、正しく循環させていくことが大事。そういう意味では今、さまざまな分野でリサイクル素材の活用が進んでいるのはすごくポジティブなことだと思いますよ」。
これに関連してもう一つ、未来の地球を生きる子供たちへ向けて始めたのが「海の自由研究フェス」。文字どおり「海の環境問題」と「夏休みの自由研究」を掛け合わせたもので、昨年は2500人以上の参加者を集めた人気のイベントだ。
目玉は海のごみを材料にさまざまな工作を楽しめるワークショップ。もちろん、ただつくるだけではない。
「例えば、マイクロプラスチックを浮かせて作るスノードームなら、『そもそもマイクロプラスチックとはどういうものか』とか『何が原因で生まれてしまうのか』とか『それが海に住む生き物やそれを食べる人間にどういう影響を及ぼすのか』まで学べるようになっています」。
参加者の1/3は、はじめから環境問題に興味を持っている子、半分以上が単純に自由研究で悩んでいる子、なんだとか。
「親子で参加できるイベントなので、保護者の方にも環境のことを知ってもらうきっかけになればと思っています。とにかく、まずは楽しむことが第一。それをきっかけに、少しでも環境のことに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。初めてgreen birdの活動に参加した時の僕がそうだったように」。
■プロフィール
福田圭祐(フクダ ケイスケ)
1990年生まれ。NPO法人「green bird」理事長。17歳の夏に初めて「街のごみ拾い」に体験して以来、定期的に活動に参加。その後、広告代理店勤務を経て、2016年より「green bird」に参画。2019年から理事長を務める。
【INFORMATION】
海の自由研究フェス 2024
開催日時:2024年7月20日 (土) 、7月21日 (日) 10:00~17:00
会場 :WITH HARAJUKU
対象 :小学生
参加費 :無料 (※ワークショップのみ、事前申込と500円(税込)の参加費が必要です)
ドクターブロナーブースではドクターブロナー公式Instagramをフォローしてクイズに答えてくださった方全員にサンプルをプレゼント。
さらにこのイベント限定のアウトレット販売もいたします。
PHOTO:Akane Watanabe
EDIT&TEXT:Soichi Toyama